甘党さん その1
友人は大のチョコレート好きです。半端じゃあありません。
それは「チョコレートだけでも生きていける」というほどで、そして料理はからきし駄目な彼女が、レシピを見ないで空で作れる食べ物といえばチョコレートケーキとチョコレートムースなのでした。
「ここのチョコレートケーキはとにかく絶品。私が言うんだから間違いないよ。ま、とにかく食べてみてよ」
友人がそう絶賛して止まないチョコレートケーキは、マレ地区にある一軒のビストロの自家製のものでした。
このあたりは、シナゴ少を中心に小さな食品店とか雑貨屋などが軒を並べるパリ屈指のユダヤ人街。
黒い帽子をかぶり、ひげを長く伸ばした正統派の敬慶なおじさんや、ヤルムッカと呼ばれる小さな丸い帽子を頭の上にのせた少年たちの姿もよく見かける。
そんな中のこの一軒でした。